3/23 VitaminX Evolution × Pinky:st. カウントダウン
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わーい! 冒険だ冒険だ!

お宝はオレ様のモノだぜェ!



【一睡の冒険】

――柔らかく、春の日差しが降り注ぐある日。瑞希は近所の公園を散歩していた。




「眠い……かも……この辺で良いかな」


 そう呟きながら小さなあくびを一つ。枯れ草の上に寝転がると、ゆっくりと目を閉じた。
 春一番も通り過ぎて、気温も温かくなってきた。今ここで寝たとしても、きっと風邪はひかないだろう。
 なんて日差しが気持ちいいんだろう。すぐにでも眠りに落ちてしまいそうだ。


「……ぐぅ」


 目を閉じる直前、悟郎がこっちに向かってくるのが見えたような気がする。だけど日差しに暖められた枯れ草の上は気持ちよく、目を開けるのさえ既に億劫だ。




「ミズキー?寝てるの?こんなところで寝たら、風邪ひくよー?」

 悟郎の声が遠くに聞こえる。しかし瑞希は、もう半分眠りに落ちてしまっていた。
 
「……なんだか良い夢を見ているみたい。起こしたら可哀想だよね」

 悟郎のそんな言葉を最後に、瑞希は夢の世界へとダイブしていったのだった。
   
「……あれ?」


 目を覚まして、瑞希は自分の今いる場所が分からずに首を傾げた。
 見渡すと辺りは鬱蒼と茂った森の中で、自分は普段とは異なる格好をして立っている。
 見てみるとローブのようにも見えるが、はてこれは一体どういう訳だろう。


「……ミズキ、ミズキどうしたの?」


 不意に横合いから袖を小さく引っ張られ、そちらを振り向いて瑞希はまたも目を丸くした。


「……先生?」




 見ると、悠里もまた普段とは異なる服を身につけてその場に立っていた。白衣のようにも見えるが……よく分からない。杖を握り締めて、不安そうな顔で瑞希を見上げている。


「……先生って、何を言っているのミズキ。私はメディックで、あなたはアルケミストでしょう?」


「メディック……アルケミスト……」


 その言葉を繰り返して、ようやく状況が飲み込めてくる。
 自分はアルケミスト、ユウリがメディック。それから……リーダーのツバサがダークハンターで、ハジメがブシドー。キヨハルがガンナー、ゴロウがレンジャーでシュンがバード。
 そうだ、自分達は世界樹の踏破を目指す冒険者で、幾度も傷つきながらようやくここ、世界樹の最上階にたどり着くことが出来たのだ。
 そしてここは最後の部屋……。この奥に、世界樹の宝が眠っていると聞く。


「うん……そう……そうだったね」


「おいミズキ、何言っているんだよ!寝ぼけてるのか?全く、樹海の中だって言うのに眠るなよ?ここら辺、まだモンスターがうじゃうじゃうろついているんだからさ」




「ハジメ……」


 刀を担いでハジメがニヤリと笑う。ミズキもそれに合わせるように、小さく笑った。


「世界樹の宝か……楽しみだな。一体いくらで売れるんだ?今の持ち金がこれくらいだから……」


 その隣でシュンがそろばんを弾きながら何やらぶつぶつ呟いている。あまりいないだろう。楽器よりもそろばんを大切にするバードなんて。




「ま、ここまで来たからにはオレ様に全て任せておけって!キシシシシシッ!どんなモンスターも、この清春様の銃でイチコロだぜぇ!」


 キヨハルが愛用の銃を手に不敵に笑う。根拠のない自信も、キヨハルが言うと本当に聞こえるような気がするのは何故だろう。


「でもでもでも!とりあえずこの先には敵さんあまりいないみたいだよ。もうすぐお宝に会えるんだよね!ゴロちゃん、ポペラドキドキしてきた!」


 弓を振り回しながらゴロウが跳ねる。ミズキはそれから少し距離を取りながら、自分も同様に鼓動が早くなるのを感じていた。




「……とにかく、この扉の向こうに宝があるんだ。思えば長い道のりだった……。だがしかし、これで宝は俺たちのものだ!開けるぞ!みんな!」


 ムチを手にしたツバサがリーダーの威厳でもって号令をかける。それを合図に、全員が目の前の大きな扉にとりついた。
 ゆっくりゆっくり、大きく扉を開いていく。
 そして目の前に広がる光景に、皆は息をのんだ。


「これが、世界樹の宝なのか……?」




 箱に入っているせいで中身は見えないが、内側から光り輝いているようにも見える。
 皆の緊張が自分にも伝わって、息が苦しい。その時、ユウリの手がミズキの手をそっと握り締めてきた。




「……ユウリ」


「どんな宝なのかしら……すごく、ドキドキするわ」


「うん、僕も……」




 B6の皆が見守る中、ツバサがゆっくりと宝箱へと近づいていく。そして宝箱の蓋に手をかけると、ゆっくりと押し開いていった――
   
――ところで、目が覚めた。


「あ……なんだ、夢か……残念……」




 だけど、とても楽しい夢だった。だがある意味、夢じゃないのかもしれない。
 一年の間に、自分達の担任と共に様々な出来事があったことを思い返す。その結果、手に入れたものは沢山あった。
 その時手に入れたものが、あの宝箱には詰まっている。そう、感じたのだ。


「……ね、トゲー」


「トゲ?」




 トゲーが首を小さく傾げて瑞希を見上げる。そんなトゲーを大切に持ち上げながら、瑞希は空を仰いだ。
 卒業式の日まで後4日。その時まで、一日一日を大事にしていこう。




 大切な仲間と、大好きな先生と共に。
 

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*COMMENT*
春月灯さんにSSを書いていただきました!
前から1度でいいからやってみたかったピンキー写真+SS。
数枚の写真からSSを書いていただきまして、書いていただいたSSから新たに写真を撮りまして、すごく楽しかった〜!
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